●外国人と働く機会
日本で働く外国人の数が年々増え続ける中、今回のアンケートで、外国人雇用に関して漠然と抱いていたイメージから、より具体的な問題点や今後の課題が見えたという点は、非常に有意義であると言えます。
Q1にある通り、6割強の人が外国人と何かしらの接点があるという結果が出ていますが、日本に入国する外国人の数を単純に見ても10年前と比べて約2倍、一般企業で働く外国人が通常持っている在留資格(いわゆる就労ビザ)別に見てもその数は年々増加し、この傾向は今後も続くことが予想されます。日本人の配偶者や日系人等を含めるとその数は更に増え、永住者の人数の増加から、日本に定住する傾向も窺えます。
| 在留資格の種類 |
平成15年 |
平成19年 |
| 入国者数 |
外国人登録者数 |
入国者数 |
外国人登録者数 |
人文知識・国際業務
(翻訳等、文系の事業務) |
6,886 |
44,943 |
7,426 |
61,763 |
技術
(エンジニア等、理系の事業務) |
2,643 |
20,807 |
10,959 |
44,684 |
| 企業内転勤 |
3,421 |
10,605 |
7,170 |
16,111 |
技能
(調理師等の特殊技術を持つ者) |
1,592 |
12,583 |
5,315 |
21,261 |
永住者
(特別永住者(在日韓国・朝鮮人等の方を除く)) |
― |
267,011 |
― |
439,757 |
出所 法務省入国管理局編 平成20年版入管白書「出入国管理」
直接的、間接的にかかわらず、外国と関係を持たずにビジネスを行うことがもはや不可能となった現在において、今後、外国人と仕事をする機会は避けられないと言えます。では外国人と仕事をする場合、どのような点が問題となり、それを解決するにはどうしたら良いのでしょうか?
●外国人と働く上で支障となる点とは?
Q2にある通り、過半数の人が「日本人と仕事をするのとあまり変わらない」と回答している一方、やりにくいという意見も35%ある点、またQ3で76%の人が「支障となると感じたことがある」と回答している点を考慮すると、必ずしも上手く行っている訳ではないことが伺われます。その理由としてQ2〜Q4で顕著に現われているのが、「言葉の問題」、「日本の常識(ルール、マナー)・非常識が通じない」、「価値観が違う」、「自己主張が強い」、「組織の一員になりきれない、責任感が希薄」といった点です。
なお「言葉の問題」というのは、純粋に日本語そのものが通じる、通じないという問題だけでなく、日本語の微妙なニュアンス、言葉の背景にある解釈や文化的な理解も含まれると考えられるため、「日本の常識が通じない」という部分も含まれるかと思います。
では、この結果をどう受け止めれば良いでしょうか?
上記をまとめると、外国人が流暢な日本語を話し、日本人と同じ価値観を持てば、仕事が支障なく行われるということになりますが、実際にはそれほど単純な問題でもありません。
例えば日本語能力を優先して日本語専攻の外国人を雇用する場合、その他の専門知識に欠ける事となり、逆にエンジニア等専門知識に焦点を当てると、日本語能力が劣る事が多く、それがジレンマであるというのは良く耳にするケースです。ここで考える必要があるのは、その外国人に何を期待して雇用するのか、そもそも外国人を雇う理由は何かという点だと思います。
●文化の違いを乗り越える
外国人が日本で働く以上、日本語や日本の商習慣を含めた文化を学ぶことは確かに重要です。とは言え日本人の英語習得を見てもわかる通り、語学は一朝一夕で上達するものではなく、また言葉が通じれば必ず意思疎通が上手くいくという訳でもないのが実情です。
では今現在の語学レベルで上手く働けるような仕組みとはどのようなものでしょうか?
同じ言葉を話すということは、共通の認識を持つということに他なりません。外国人と何かしらトラブルがあった場合、まずは具体的に何に支障を来しているのか、そしてそれを解決して最終的に目指す目標は何なのかを明確にする必要があります。目的と手段を意識して分け、その目標を達成するためにとるべき行動は何か、その最終目標に向かうために外国人労働者が直面している障害が何かを知ること。また、その目標を達成するメリットを理解してもらい、どのようなサポートができるかを考えることが重要です。「最終目標を外国人と共有すること」が文化の違いを乗り越える鍵となります。
そのためには、その業務を行う上での最終目標の定義を明確にして共有し、それが達成されたことがわかる明確な外部基準を設ける必要があるのではないかと思います。
単純に「相手が価値観を変えるべき」とか「もっと相手を理解すべき」というより、更に掘り下げて目下の課題を解決し、業務の効率を上げることが企業の利益にも繋がるのではないでしょうか。
さて、アンケートの中でも「外国人は自己主張が強い」という回答がよく見られますが、そもそもなぜ自己主張が強い外国人がいるのでしょうか?まず考えられる理由としては、そうしないと自分の望みが叶えられないのではないかという不安を抱えている、またそれが自分の希望を叶える方法として今まで自国で機能してきた点が挙げられるかと思います。それとは対照的に日本人の場合、主張しなくても周囲が察してくれる、また主張し過ぎることは逆効果であることが暗黙の了解となっています。
価値観の違う文化の中に身を置くことによって外国人労働者が感じる不安感を払拭させるには、相手の気持ちや潜在的ニーズを把握することが重要となります。
相手と対立するのではなく、同じ側に立つことによって、「理解してもらえた」という安心感、信頼感が生まれます。相手の心を開くことにより情報量が増え、それが問題点の早期発見に繋がり、企業の利益にもなるのではないでしょうか。
●コミュニケーションが解決の鍵/
Q7に「コミュニケーションの問題はどちらが歩み寄っていくべきか」という設問がありますが、今までの内容をまとめると、コミュニケーションが問題解決の鍵と言えそうです。確かに外国人が日本語と日本文化を身につけると共に、お互い歩み寄る姿勢が必要ではあるかと思いますが、自から積極的にコミュニケーションの問題を解決することで、業務の効率もアップし、雇う側、雇われる側双方の利益になるのではないかと思います。
世界NO.1カリスマコーチといわれるアンソニー・ロビンズはその著書の中で、コミュニケーションの達人は柔軟性に富んでおり、意思の疎通がうまくいかない時には、相手の世界観に合わせて自分の行動を変える方が得策だと述べています。
効果的なコミュニケーションの鍵は、「相手にやらせたいこと」ではなく、「相手がやりたいと思っていること」をやるように仕向けることで、「言い負かす」よりも「相手を受け容れる」ことで相手を説得しやすくなるそうです。必ずしも相手の言うことに同意する必要はないものの、まずは相手の感情に理解を示し、尊重することが大切としています。
これから外国人と一緒に働くことが避けられないのであれば、その外国人労働者の存在価値、既に持っている能力・才能に注目し、それをどう活かすかを考えることが重要なポイントとなります。
実際にQ4で外国人と働いてプラスとなった面として、視野が広がる、異なった発想や考え方が発見できたという意見もありますし、外国人労働者の勤勉さ、前向きな取り組み姿勢、向上心、積極性、逞しい精神力等から学べたという意見もあります。
そのような面にも目を向けて、どうすればお互いにとってメリットがある関係を築けるかという点に着目できればと良いのではないかと思います。
●外国人を雇用する場合、日本にとって望ましい分野や労働条件は?
どのような分野で外国人労働者を受け入れるべきか、また賃金体系等どのような労働条件が良いかという問題は、政治的、経済的、社会的等あらゆる側面を考える必要があるので、一概には言えないかと思います。
Q6で工場等の生産関連労働に外国人を受け入れるべきとの意見が多くありますが、安価な単純労働者に対する需要があることは確かで、実際に多くの日系ブラジル人、ペルー人等が来日して工場等の生産関連労働に従事していますし、本来の趣旨とは違うものの、数多くの研修生が実質的には単純労働の担い手となっています。いずれの場合も多くの問題点が指摘されており、現行制度において単純労働者を認める就労ビザがないから問題が発生するのだという意見もあります。
ただ諸外国、特に移民を多く受け入れている欧米諸国の例を見ると、安価な単純労働者を受け入れることによって新たな問題が発生してきているのも事実です。例えば低所得者層のスラム街ができて治安が悪化したり、勉強についていけない外国人の子供たちが増えたり、失業等によって社会保障費の負担が増えたり、自国民の失業率が増えたりと、安価な労働力を増やして自国製品の国際的競争力がついたとしても、社会全体で総合的に見ればマイナスな場合があることも無視できないでしょう。
看護師、介護福祉士については、現在、インドネシア及びフィリピンとの協定に基づき、一定の要件や人数の制限を設定した上で今年から受け入れを開始し、現在候補者が就労・研修を行っている状況です。その結果によって今度どうするかという部分が決められて行くでしょうから、今は様子見といったところでしょうか。
その他事務職、語学講師、プログラマー等の分野や特殊な技能、能力をもった外国人労働者については、現在の法制度で既に就労が可能となっていますが、一定の学歴や職歴の要件を満たしている必要があるので誰でも働けるという訳ではありません。また現法制度下で認められている分野や特殊技能は、必ずしも現時点でのビジネス上のニーズを全て反映している訳ではないので、その範囲の見直しが行われれば更に幅広く外国人労働者の活用が可能になるかと思います。
外国人雇用の諸問題は特殊に思えるかも知れませんが、その対処法を学ぶことによって、女性の社会進出の問題や世代間のギャップなど、文化が異なる他の層や上司と部下の関係などにも応用が可能です。ぜひこの機会を活かして視野を広げ、新たな可能性を探って頂くきっかけとなれば良いのではないでしょうか。
【執筆者プロフィール】
眞嶋容子(まじまようこ)
1974年札幌生まれ。豊富な海外経験と堪能な語学力を活かし、外国人の在留資格・ビザ申請、外国会社や外国人の日本進出支援などの国際的分野を専門に扱う行政書士。最近ではコーチングスキルを活用した外国人とのコミュニケーションに関する企業研修や講演等を企画。
ホームページ:http://www.juridique.jp/ |
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