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社会保険労務士 笹島 敏邦
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1 中小企業の賃金・退職金事情 twitter   資料へのリンクはこちら

 今回取り上げる「中小企業の賃金・退職金事情(東京都)」は、従業員300人未満の中小企業のみを対象とする統計調査であり、毎年1月に公表されています。「賃金」については毎年、「退職金」と「労働時間」については、隔年で交互に統計調査が実施されており、今回は「退職金」に関する統計調査が実施されています。

 人事制度・賃金制度が年功的な考えから成果・業績的な考えに変遷していく中で、退職金制度についても、その意義や役割を再考し、制度の見直しに着手する企業が増えています。退職金制度の見直しを進める上でも、現状の退職金に関する統計調査への理解は必要です。今回は、「退職金」に関する統計調査に焦点を絞って、解説を進めていきたいと思います。

当該統計調査については、この連載の第1回でも取り上げており、主に「賃金」に関する統計調査について解説しています。



1 入手方法

【ダウンロード】
 東京都産業労働局のトップページから「統計・調査」→「雇用・就業」→「中小企業の賃金・退職金事情」から直近の調査結果を選択することにより、必要な情報を入手することができます。

 また、グーグルやヤフーにおいて「中小企業の賃金事情」と検索すれば、上位(おそらく最上位)に表示されるはずです。

【購入】
 東京都中小企業振興公社が、東京都の承認を得て複製出版しています。



2 調査目的

 東京都内中小企業の賃金、退職金等の実態を明らかにし、労政行政施策上の基礎資料とするとともに、中小企業における労働条件の改善及び健全な労使関係の確立に資することを目的としています。



3 調査対象

 平成18年事業所・企業統計調査の事業所名簿から、下表の基準による3,500企業を層別抽出、1,388企業から有効な回答を得ています(有効回答率39.7%)。




4 調査項目

 「初任給」「平成22年7月1か月の賃金」「平成21年の年間給与支払額」「賃金制度」「モデル賃金」「賞与・諸手当」「定年制」「退職金制度」「モデル退職金」などが調査項目となっています。



5 調査結果をみる

退職金制度の有無

 「退職金制度がある」と回答した企業が81.3%、「退職金制度がない」と回答した企業が17.9%、「無記入」が0.8%となっています。

 また、退職金制度の内容をみてみると、「退職金制度がある」と回答した企業のうち、「退職一時金のみ」が61.0%、「退職一時金と退職年金の併用」が35.2%、「退職年金のみ」が3.8%となっています。

 ここ数年、「退職金制度を廃止したいがどうすればいいのか」というような相談を受ける機会が多くなっています。退職(一時)金は、多くのキャッシュを用意する必要があり、景気低迷で業績が伸び悩んでいる企業の経営を圧迫しています。中小企業ではその傾向が顕著で、退職金制度を維持することが非常に難しくなっているわけです。ただ、実際には「廃止」に踏み切るケースは少なく、「制度変更(多くは退職金計算式の変更)」を実施し、会社の負担を軽減しているのが現状でしょう。

 退職金は、従業員にとって「老後の人生設計」を大きく左右するもので、制度の変更には慎重な対応が必要です。かといって、「企業の支払能力」に見合わない退職金制度を無理に維持してしまうと、「これから会社の中心で働いてもらわなければならない世代」への配分(主に賃金)を縮小しなければならなくなります。人事労務担当者、最終的には経営者は、非常に高度な経営判断を迫られているわけです。

退職一時金の支払準備形態

 退職一時金の支払準備形態をみてみると、「社内準備(61.8%)」がトップで、「中小企業退職金共済制度(43.5%)」「退職金保険(13.0%)」「特定退職金共済制度(8.6%)」と続いています。

 ここであげられている「中小企業退職金共済制度」には、中小企業退職金共済制度のほか、建設業退職金共済制度、清酒製造業退職金共済制度及び林業退職金共済制度が含まれています。上記退職金制度を運営している独立行政法人勤労者退職金共済機構のデータによると、平成22年10月時点における中小企業退職金共済制度の共済契約をしている企業は369,043所(3,130,461人)、建設業退職金共済制度の共済契約をしている企業は183,470所(2,848,695人)、清酒製造業退職金共済制度の共済契約をしている企業は2,441所(23,103人)、林業退職金共済制度の共済契約をしている企業は3,330所(40,598人)となっています。平成22年11月分の労働力調査によると、建設業の就業者数は約488万人です。このうちの約285万人が建設業退職金共済制度に加入していることになり、その割合の高さに驚かされます。

 なお、特定退職金共済制度の相手方である特定退職金共済団体には、商工会議所や商工会などがあり、中退共制度との間で通算契約を締結していれば、相互で退職金相当額の通算が可能となります。

退職一時金の算出方法

 退職一時金の算出方法をみてみると、「退職金算定基礎額×支給率(47.8%)」がトップで、「勤続年数に応じた一定額(18.2%)」「ポイント制(退職金ポイント)×ポイント単価(13.4%)」「退職金算定基礎額×支給率+一定額(4.1%)」などが続いています。

 また、退職金算定基礎額の算出方法をみてみると、「退職時の基本給(49.6%)」がトップで、「退職時の基本給×一定率(25.5%)」「別テーブル方式(10.8%)」「退職時の基本給+手当(4.4%)」「(退職時の基本給+手当)×一定率(3.7%)」などが続いています。つまり、何かしらの形で「退職時の基本給」が関与する割合が80%を超えているのです。

 現在、定年退職を迎えるような世代では、年功的な賃金制度下で働いていた人たちが非常に多く、定年退職時には基本給が高くなっています。当然退職金の額も高くなっており、企業には大きな負担となっているわけです。

 そこで、企業側の負担を軽減するとともに、在職中の貢献度を反映させることなどを目的として、「別テーブル方式」や「ポイント制」などに切り替える企業が増えているわけですが、これらの制度にも考慮しなければならない問題があります。たとえば、「別テーブル方式」の場合、「退職時の職能等級」をベースとするケースが多く、退職時までのプロセスにおける貢献度はほとんど反映できていないのが現状です。また、「ポイント制」の場合、「退職時までのプロセスにおける貢献度」を反映することが可能になる半面、「全従業員の退職時までの人事情報」を把握しなければならなくなります。人事労務担当者が代々にわたって「全従業員の退職時までの人事情報」の管理を引き継いでいくことは、企業にとって大きな負担となります。特に中小企業がこれらの管理を自社で行っていくことは非常に難しく、個人的には、「ポイント制は、混乱を招く可能性が高いので極力避けた方がいい」と考えています。


退職一時金受給のための最低勤続年数

 自己都合退職の場合、「3年(51.1%)」がトップで、「1年(17.6%)」「2年(14.2%)」「5年以上(7.6%)」と続いています。

 また、会社都合退職の場合、「3年(31.1%)」がトップで、「1年(28.6%)」「2年(9.5%)」「1年未満(6.5%)」となっており、自己都合退職よりも短い傾向にあります。


退職一時金の特別加算制度

 退職一時金制度を導入している企業(1,085社)のうち、44.1%の企業(479社)において特別加算制度があり、この特別加算制度の内容(複数回答可)をみてみると、「功労加算(81.2%)」が圧倒的に高い割合となっています。

 ただ、この功労加算については、「規定化されていても、実際に使われるケースは極めて少ない」というのが、私の印象です。私は、社会保険労務士の仕事を10年以上していますが、「功労加算はいくら払った方がいいのか」「功労加算の相場はいくら位なのか」というような質問や相談を受けたことは、ほとんどありません(1度だけあります)。退職金の支払額算出や懲戒に伴う減額や不支給に関する相談は結構受けているのですが…。


退職年金の支払準備形態

 退職年金の支払準備形態をみてみると、「厚生年金基金(44.1%)」がトップで、「適格退職年金(22.0%)」「確定給付企業年金(20.5%)」「確定拠出年金(15.7%)」と続いています。

 前回調査(平成20年)では、「適格退職年金(39.8%)」「厚生年金基金(24.2%)」「適格退職年金と厚生年金基金の併用(11.8%)」「自社年金・確定拠出年金等(17.0%)」、前々回調査(平成18年)では、「適格退職年金(47.7%)」「厚生年金基金(19.9%)」「適格退職年金と厚生年金基金の併用(16.0%)」「自社年金・確定拠出年金等(10.6%)」というような結果が出ており、適格退職年金の廃止の影響を受け、今までとは大分異なる結果となっています。


適格退職年金制度からの移行状況

 平成14年4月時点において適格退職年金制度がある企業の移行状況については、「すでに移行・廃止した(70.5%)」「移行・廃止が決定している(14.8%)」「検討中である(14.2%)」「未検討である(0.6%)」となっています(平成22年7月31日時点)。

 適格退職年金制度は平成24年3月31日で廃止されます。移行・廃止の手続きには、「新しい退職金制度に関する方針の決定」「経過措置・代替措置の検討」「従業員への説明」「従業員の同意」「退職金規程の変更」など、その着手前にクリアしなければならない多くのステップがあります。昨年の7月31日時点では、「検討中・未検討」の割合が14.8%となっていますが、これらの企業は、一刻も早く退職金制度や移行先の方針を決定し、手続きを開始する必要があるわけです。

 なお、移行・廃止が決定している企業の内訳については、「中小企業退職金制度(43.0%)」「確定給付企業年金(32.1%)」の割合が非常に高くなっています。中小企業退職金制度への移行の割合が高い理由としては、「適格退職年金制度から比較的簡単に資産を移管できる」「移行後の事務処理が簡易」などが挙げられ、確定給付企業年金への移行の割合が高い理由としては、「適格退職年金制度と内容が近い」「受給権者の保護が強化されており、従業員側の納得が得られやすい」などが挙げられます。


モデル退職金

 ここでいっているモデル退職金とは、卒業後すぐに入社し、普通の能力と成績で勤務した場合の退職金水準のことです。定年時の支給金額は、高校卒が11,535千円、高専・短大卒が11,892千円、大学卒が12,713千円となっています。

 退職金の支給額については、企業規模により大きく異なる傾向があります。たとえば、日本経済団体連合会から発表されている「2008年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果(従業員500人以上の企業が77.7%)」における定年時の退職金支給額は、高校卒(総合職)で23,028千円、大学卒(総合職)で24,174千円となっており、上記の中小企業におけるモデル退職金の2倍程度の退職金が支給されているようです。



1 3月の主な調査・統計をチェック! twitter

 毎月発表される「毎月勤労統計調査(厚生労働省)」「月例労働経済報告(厚生労働省)」、「労働力調査(総務省)」のほか、今月は下記のような人事労務に関連する調査・統計が発表される予定となっています。


調査・統計(調査機関) 調査・統計の内容 調査・統計の入手方法
中小企業労働条件等実態調査
(東京都)

都内中小企業における雇用管理・労働条件の実態や労使の意識・課題を把握するために行われている調査で、本年は「派遣労働者に関する実態調査」が実施されています。
なお、昨年は「パートタイマーに関する実態調査」、一昨年は「労働時間管理等に関する実態調査」が行われました。

東京都産業労働局のトップページ」→「統計・調査」→「雇用・就業」→「中小企業労働条件等実態調査」から直近の調査結果を選択することにより、必要な情報を入手することができます。
男女雇用平等参画状況調査
(東京都)

都内中小企業における男女平等の推進と女性労働者の地位向上を目指して、女性労働の現状・課題を把握するために行われている調査です。
昨年は「企業における男女雇用管理とポジティブ・アクションに関する実態調査」、一昨年は「均等法、育児・介護休業法への対応等 企業における男女の雇用管理に関する調査」が実施されました。

東京都産業労働局のトップページ」→「統計・調査」→「雇用・就業」→「男女雇用平等参画状況調査」から直近の調査結果を選択することにより、必要な情報を入手することができます。
能力開発基本調査
(厚生労働省)

企業、事業所及び労働者の能力開発の実態を明らかにし、職業能力開発行政に資することを目的に行われているもので、前回調査では「企業調査」「事業所調査」「個人調査」が実施されました。

厚生労働省のトップページ」→「お知らせ欄の統計調査結果」→「分野別一覧」→「10. 福利厚生」から「能力開発基本調査」を選択することにより、必要な情報を入手することができます。
雇用動向に関する企業の意識調査
(帝国データバンク)

雇用に関する企業の意識を調査するもので、毎年実施されています。昨年の調査対象は全国で21,750社、有効回答企業数は10,624社でした。「正社員の採用状況」「非正社員の採用状況」「雇用調整の実施状況」「雇用調整方法」などが取りまとめられています。

帝国データバンクのトップページ」→「統計・レポート欄のTDB Watching」→「該当年度の3月発表」の中から「雇用動向に関する企業の意識調査」を選択することにより、必要な情報を入手することができます。
新入社員のタイプ
(日本生産性本部)
2011年分は3月下旬予定
2010年分はこちら

毎年発表されているもので、平成22年度は「ETC型」、平成21年度は「エコバック型」、平成20年度は「カーリング型」でした。
今年はどのようなネーミング(型)となるのでしょうか?

日本生産性本部のトップページ」→「調査研究・提言」→「調査研究」の中から該当年度の「新入社員のタイプ」を選択することにより、必要な情報を入手することができます。
日本的雇用・人事の変容に関する調査
(日本生産性本部)
第12回(2010.1月公表分)はこちら

1997年より、全上場企業を対象にして実施されている調査で、今回で13回目となります。前回調査では、「再雇用の状況」「賃金体系」「経営幹部育成」「役員の処遇」などの調査結果が取りまとめられています。

日本生産性本部のトップページ」→「調査研究・提言」→「調査研究」の中から該当年度の「日本的雇用・人事の変容に関する調査」を選択することにより、必要な情報を入手することができます。

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